第15号の特集は「阪神・淡路大震災における文書被害」です。内容は、1995年1月17日の大地震から約100日あまり過ぎた頃の兵庫県庁・尼崎市立地域研究資料館・西宮市行政資料室についての取材報告と、文書の危機管理の提案です。
神戸市、西宮市、尼崎市は兵庫県の南東部に位置する都市です。震源地に近く特に甚大な被害があった地域ですが、幸いにも行政に支障をきたす文書の損失はほとんどありませんでした。それは、文書の大敵である「火」「水」がはいらなかったからです。とはいえ、地震直後の西宮市の行政資料室等の写真を見ると、部屋全体に書架が倒れ込み足の踏み場など全くない状態です。ここに職員がいたらと思うとぞっとします。
平成7年5月11日に、兵庫県内の全市に文書被害に関するアンケートを実施し、5月25日までに8市からご回答を頂きました。その中で、「文書管理のうえで災害対策として重要なことは何か」という質問に
- 保存文書の現状把握の完全性と火災等の防備が重要ではないかと思われる。
- 重要書類の管理については、耐火性を充分考慮する必要があると考えます。
- ファイリングロッカーの倒れるのを防止することが必要。
- 施錠可能なものは施錠しておくこと。
というご回答をいただきました。これらのことはもちろん最重要のことですが、かつて市町村合併の際に大量の公文書が廃棄されたことを思い出します。当時の職員にとってそれらは、「新しい文書」であって歴史的価値を認めることが困難であったためだと思われます。地震の被害を免れた文書が、復旧に係る場面で、原秩序に戻すことの困難さなどから廃棄されることが懸念されます。
今回の取材で、兵庫県文書課課長補佐・文書管理係長小林武氏は「最も重要なのは、日頃の文書管理、ファイリングの徹底です。どこに何があるのか明確であれば、火災等によって文書が失われさえしなければ、たとえ文書が散乱したとしても、もとの秩序に復旧させることは可能です。」と述べています。
やはり、大切なのは日頃からの文書に対する意識の徹底と、ファイリングの徹底なのだと思いました。
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