特集は「地方自治体におけるファイリングシステム(第1回)」です。日本におけるファイリングシステムは、昭和30年代の後半から40年の前半にかけて、地方自治体においてファイリングブームともいうべき現象がおこりました。昭和の大合併により合併前の異なるシステムを統一するための新たなファイリングシステムが必要だったためです。しかし、残念ながら、昭和57年の調査では、市区で36%、町村区では73%の団体がシステムを崩壊させています。
昭和50年にはいるとコンピュータの普及が事務環境を一変させます。「ペーパレス」の希望も空しく、OA機器の普及と共にオフィス内の紙は増加し続けています。更に、地方自治体の範囲、サービスの増加が文書の増加に拍車をかけている状態です。
加えて、地方自治体では、文書館と情報公開、行政文書のA判化により新たなファイリングシステムの構築が求められています。
ファイリングシステム構築の目的は、(1)文書取扱事務の効率化(2)適正保存、適正開示(3)事務(労働)環境の整備、災害対策(4)歴史的価値を有する行政文書の保存、と述べられています。特に(4)歴史的価値を有する行政文書の保存は、各文書を保存期間がきれたからといってすべて廃棄してしまうのではなく、歴史的価値のある行政文書が廃棄されることがないような基準づくりが必要です。
ファイリングルールについては、@〜Hの最低条件が掲げられています。この条件が充たされていれば運用面で多少の問題があったとしても、そのことによってファイリングシステムが崩壊することはないとしています。
最後に記事は、今日の状況における、従来の個人の対応能力をはるかに超えた文書量に対応するためには、コンピュータによるファイリングシステムのサポートが不可欠であるとしています。
「市町村文書保存担当者講習会 栃木県」の記事では、講習の内容が文書館の問題のみならず、地方自治体のファイリングシステム、情報公開の面まで踏み込んでいる。文書を中心に考えれば、発生から廃棄、永久保存に至るまでその管理主体は変わっても、公文書が地域住民の旧友財産であることにかわりはない。それぞれの管理主体どうしが有機的に関連をもち、お互いに理解しあい協力体制をとることが大切であるとしています。
文書管理用語定義集(第4回)
簿冊、現用文書、半現用文書、非現用文書、集中管理、分散管理、引継、積み上げ方式、割付方式について定義しています。積み上げ方式、割付方式は文書の分類を原課が決定するか、既に文書管理課が決定した分類に文書を当てはめるかによって、前者を積み上げ方式、後者を割付方式と呼んでいます。実際には、両者の折衷方式をとるケースが多いのだそうです。
“紙”を考える(第5回)は、紙を劣化させる原因、物理的要因、科学的要因、生物的要因に大別できます。今回は、科学的原因の「相対湿度」について解説しています。紙は高温で湿度が高いと劣化します。そして、紙は常に周囲の湿度と同じになろうとし、湿度の上下を繰り返すと紙の細胞膜が堅くなり柔軟性を失っていきます。さらに、空気中の硫黄酸化物、窒素酸化物が水分と共同作用し、硫酸、硝酸となって紙をいためるとあります。高温多湿で、気温差のある日本での紙の保存は難しいのですね。
書評は、2冊ともに行政文書のA判化についての書籍です。A判化によって小学生のランドセルも大きくなりました。A判化によって、いろいろなところで対応が必要になると思います。当時は大変だったのでしょう。今となっては、A判化とさえ言わないくらい普通のことになっています。
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