既に、「当代ファイリングシステム=バーチカル方式によるファイリング」という見方はナンセンス以外の何物でもない、と実感していらっしゃる方々が多いことと思います。なので、前回・前々回の編集室だよりを境にして、以降、当編集室だよりでは、「ファイリングシステム」及び「ファイリング」を、次のように定義して用いることとします。
「ファイリングシステム」とは、「組織体の維持発展のために必要な文書等を、一切私物化せず、その組織体のものとして、発生(文書作成)から、伝達(流通・処理)、保管、保存、廃棄に至る文書のライフサイクル全般に亘り、いつでも、誰でも、必要なときに、必要な文書を迅速に取り出せ利用できるような、組織的な文書の整理・保管の仕組み」です。そして「ファイリング」は、そのためのツール、技法です。[*]
ところで皆様ご存知のように、ファイリングには、大別すると簿冊型(バインダー方式)とバーチカル型(フォルダー方式)の2種類があります。それぞれに長所短所があるので、長所をより活かしたり、短所を軽減する工夫をしながら、案件・実態に一番適合すると思料する方法で、文書管理を進めたら良いと考えます。但し、その前提として、適切でMECEな(重複なく、漏れなく)ファイル基準表と、的確な文書のライフサイクルマネジメントが実践されていることが必須です。
それらの長所短所を比較した資料・文献などが多数出ている中で、いくつか、バーチカルの方が極めて良いように報じているものがありました。執筆された当時はそうであったかもしれませんが、前々回の編集室だよりで触れた()ように、電算化でキーワード検索ができるようになった現在、即時検索という点でのバーチカル優位論は既に過去のものとなっています。
また、背表紙巾に基づく無駄なスペース利用、書類の取り出しや綴じ込み作業に要する時間コスト、穴あけの時の資料の毀損などの指摘に対しては、背表紙巾の狭いバインダーも併用するなど、工夫の余地は大いにあると考えます。但し、文書管理通信No.37()「いま地方自治体のファイリングシステムに何が求められているのか?」で既に論じているように、簿冊型は私物化しやすい(されやすい)傾向にあると、自身の経験からも言えると思います。この点は、しっかり認識して、対処していくべきでしょう。
最後に、少し古い書籍ですが、「これからの文書管理 ファイリングマネジメント」(城下直之著、日刊工業新聞社刊、2000/6/26)から 一文引用させていただきます。フォルダー方式とバインダー方式の比較表を載せた後、「この図より、一概にどちらがよいとも決めかねる。よくあるのは何が何でもフォルダー方式を採用される組織があるが、管理する文書のニーズや使い勝手により複合して活用されることをお薦めする。」(p.32)とありました。
[*] 以下の文献などを基に纏めてみました。
○ 「ファイリングシステム 5訂版」三沢仁、日本経営協会総合研究所、1987/12
○ 「文書の基本〜文書に始まり文書に終わる〜(平成29年度初任研修(前期))」
広島県自治総合研修センター、平成29年4月
○ 「文書と記録 日本のレコード・マネジメントとアーカイブズへの道」
高山正也監修、樹村房、2018/6/26
○ 「これからの文書管理 ファイリングマネジメント」城下直之、日刊工業新聞社、
2000/6/26
○ 「「ファイリング」の基本&超整理がイチから身につく本」小野裕子、すばる舎、
2009/10/26
文書管理通信編集委員見習い 樹令(いつき・れい)
2019年6月21日 |