真山仁さん著「シンドローム(上/下)」(講談社刊、2018年8月)を読み終えました。311を題材にした、ハゲタカ鷲津政彦氏が活躍する小説です。同郷(長崎県壱岐)の偉人、「電力王」「電力の鬼」と言われた松永安左エ門の自伝を読んで、商社志望を止めて電力会社に入社した2年目の大卒広報マン、そしてその電力会社の女性サッカーチームで日本代表候補として活躍する管理棟勤務の入社3年目の短卒社員、彼ら若きペアの穢れない一途な生き様・想いに、著者は明日の日本の未来を託したのかなぁ、と感じました。
ところで、この2ヶ月間ほどの間に、既に紹介した書籍の他に、震災絡みのものとして次のものに目を通しました。
1) 「東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと」
管直人 20121025 幻冬舎新書
2) 「原発危機 官邸からの証言」
福山哲郎 20120810 ちくま新書
3) 「震度7 何が生死を分けたのか〜埋もれたデータ21年目の真実」
NHKスペシャル取材班 20161105 KKベストセラーズ
4) 「福島第一原発1号機冷却『失敗の本質』」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班 20170920 講談社現代新書
5) 「脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか」
保坂展人 20160810 ロッキング・オン
いずれも行政文書ではありません。
というのも、「行政文書」とは、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式、その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関自身が保有しているもの(公文書法第2条第4項)をいうからです。そして、文書管理上、行政文書でないものを行政文書と一緒に簿冊等に綴じることは禁忌です。
しかしながら、少子高齢化、人口減、財政難等が進む中で、これから(発展的に)生き残っていくためには、プロジェクトベースのなんらかのチャレンジが必要なのではないか、と個人的には思っています。その際、勿論結果は大切ですが、それ以上にプロセス(過程)が重要になってくると考えています。そして各々は独自的な取り組みになると予想されます。
何を考え、何をやってみて、うまくいかなかったのでやり方を改めて挑戦する、とか、そういった試行錯誤を含む過程を、すべて記録に残し、改良・改善を進めていく、或は、時代背景や財政面などの変化に伴い、一旦諦めた方法で再トライする、などなど。従来とは異なる文書管理も求められる時代を迎えているのではないでしょうか。それを私は「進化する文書管理」と名付けて、ITの技術進歩と相まって改善が進む、BCPを踏まえた文書管理と合わせて、追究していきたいと思っています。
上述した1)〜5)は行政文書ではありませんが、書籍なので、図書館には保管されますし、また、内容的に公文書館などの中にも積極的に保管するところがあるでしょう。いずれも首長経験者の執筆であったり、公共放送を矜持するメディアの記録なので、「進化する文書管理」の立場からは、地方公共団体の中でも積極的に管理してみようというところが出てきてもよいように思います。
最後になりますが、最近、ここ旭川市のお隣りの一つ、上川町で、新しい試みが始まったことを知りました。積極的な未来志向に期待する移住促進のフリーペーパー「KAMIKAWORK」の発刊です()。巻頭特集では、全米住みたい街No.1と言われているポートランドを巡る旅が掲載されているようです。ポートランドと言えば、編集室だよりNo.40(2018年3月8日)で紹介させていただいた世田谷区長の保坂展人さん()が、自著「<暮らしやすさ>の都市戦略−ポートランドと世田谷をつなぐ」(岩波書店、2018年8月刊)で詳しくレポートされていらっしゃいます。新しい世界を切り拓いていって欲しいものです。
ps ) 来週と再来週の編集室だよりは、新しい未来に向けて恙なく改元が進むことを期待・祈念しつつお休みさせていただきます。
「文書管理通信」編集委員見習い 樹令(いつき・れい)
2019年4月19日 |