来年度、大学入試の仕組みが変わります。現在のセンター試験が廃止され、大学入学共通テストに移行。先週末、その2回目で最後となる試行調査(プレテスト)の採点結果が公表されました()。国語に記述式問題を取り入れるなど、アイデアはわかりますが、本番までもう2年もない、という事に鑑みると、大英断も必要なのでは、という感を強く持ちました。主役はあくまで受験生、実行側ではありません。
今週から、アルバイトで、数名の生徒さん(既卒・通信生)を対象に、化学基礎及び生物基礎のセンター試験対策の授業を始めています。ここ数年続けているので、出題傾向などについて自信をもって自論を展開できるレベルに到達した、と自負しています。以下の数字の推移、何かお分かりになりますか?
32 34 30 31 31
35 27 29 30 31
27 28 39 36 31
27 34 33 34 30
2015年〜2019年に行われたセンター試験の理科基礎4科目(上段から物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎)の平均点(満点は各々50点)の推移です*)。問題作成時の目標は正答率6割とされているそうなので、この1月実施された分は、各科の隔たりも殆どなくなり、極めて理想的な形になったと言えるでしょう。
私は化学基礎と生物基礎の2科目の問題しか、レベル感を判断できませんが、年毎により良くなってきていると感じています。文系志望者の受験生が多いことを意識してか、専門的な知識や計算力を問うのではなく、基本のキに相当する知識を抜けなく習得しているかどうかと、身近な生活や社会と関連の深い事柄を題材にして、常識レベルの洞察力・観察力・推理力などを図る問題が、相対的に増えてきています。毎年、高等学校教科担当教員の意見・評価、教育研究団体の意見・評価、問題作成部会の見解、という3者のコメントが纏められていることも改善に繋がっているのでしょう。
他の科目も同様に改善が進められてきていると推察される中で、今回の改革。特に国語の記述式導入は、本当に意味・意義のあることなのでしょうか。採点が、ぶれなく、しやすいように、との配慮で、誤字・脱字をある程度許容する、という点など、文書管理、或いは文書主義の観点からは言語道断の考え方のように思います。本来的な「表現力」をみる、ということは、本部も認めているように、答案の大量短時間採点にはなじみません。逆に、ある程度の表現力が図れれば良い、と割り切るなら、選択肢の記載内容を工夫することで十分対応可能なように思えます。
ところで、2016年以降、特に私立大文系の入試は年々難しくなり、少子化の流れにあるにも関わらず、競争が激化し、また合否判定が非常に不安定な状況に追い込まれているようです。
発端は、文部科学省の通知「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について」(2015年7月10日)。2018年9月11日の通知「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について」で、罰則強化が当面見送られたとは言え、しばらく混乱状態の続くことが予想されています。そういった環境の中での大学入試改革の導入は、受験生は勿論、現場に甚大な影響を及ぼすことが容易に想像されます。ゆとり教育の弊害の可能性について、何度かこの編集室だよりで触れましたが、問題は、彼(女)らだけに限定されるものではありません。連綿と引きずっていくものであり、また子孫にも影響を与えます。
時間的に差し迫った中で、本来の目的を完遂することを最優先し、一旦決め込んだ手段に拘らず、軌道修正することを真剣に検討すべきではないでしょうか。
遅ればせながら、今週「市町村職員研修テキストシリーズ ジャンプブック ●第3次改定版●−新規・初任職員用−〈前期編〉」(ぎょうせい刊、2000年3月15日)を読んで、文書に関する基礎知識などの確認をしました。「収受」というのは、この文書管理通信にきて初めて知った言葉です。今回やっとその意味・意義づけ(文書の到達確認)がわかりました。「受理」とは区別されることも知りました。また、最初の方で、「文書は、次のような優れた特性をもっています」として、真っ先に「確実性=内容の表示が誤りなく、確実に行われます。したがって、多くの事実に対し、証拠力を有しています」が挙げられていました。
以下、該図書を基に、忘備録的にメモさせていただきます。
【 文書事務の流れ 】
< 伝達過程 >
収受 ; 文書到達の確認
※ 申請書、届出書など権利との関係を有する文書⇒「受理」
文書の選別 (vs. 親展文書、私人あての文書、
電報や書留などの特殊取扱い文書、誤配文書など)
文書の開封
文書の受付 ・・・ 収受印押印→文書件名簿記載
配布 ; 受領方式/集配方式
起案 ・・・ 地方公共団体の意思決定に必要な内容を文書化した原案を作成すること
起案者=(通常)事務分掌によって定められた担当者
発生ケース : (a) 収受した文書に基づいて行う場合 / (b) 自ら発意して行う場合
検討すべき3点
@ 法律的観点(法令に対する適法性、手続きなどに間違いはないか。)
A 行政的観点(公益に反しないか、対外的影響はどうか、施行時期は適切かetc)
B 財政的観点(予算上の措置はされているか、将来の負担はどうか、
収入・支出手続きは正しいかetc)
起案方式
各地方公共団体が文書管理規定などによって独自に定めた起案用紙
そのほかに、簡易処理方式(事案が軽易な場合)
特殊起案帳票方式(定型的で件数が多数の場合)
起案用紙の形式
文書処理の経過などを明らかにする部分
文書保存年限、分類番号、文書番号、処理経過、
施行上の注意など(至急、秘密、公報登載などの事項)、起案者
意思決定案を記載する部分
決裁区分、件名(「・・・について」(通知)/(回答)など)
伺い文、合議先
起案分の構成
説明文、本文、別記・別表・別記様式、施行文案、参考資料
決裁前の承認・審査
回議 ・・・ 起案者の職務系列上の上司の承認を受けること
合議 ・・・ 起案の内容が他の部課に関係があるときに、その部課長に同意を得ること
審査 ・・・ 主として、法令の適用関係が適正かどうかを調整する目的で実施
決裁
地方公共団体の意思を決定する権限は、その団体の長に在る長に代わって、
その補助機関が決裁をする場合 ・・・ 専決/代決
施行 ・・・ 決裁された事案を、相手方に対して、文書で意思や事実を伝えること
浄書 ・・・ 決定された起案文書の案文に基づいて施行文書を作成すること
ワープロ、タイプ、複写、筆記、印刷など
※ 文章の証拠能力について要留意
照合(よみあわせ)
公印の押印 (割印と契印、公印の省略、印影の印刷)
発送
公告 (公告のうち、条例、規則などを公告すること=「公布」、公報登載など)
< 保存過程 >
文書の整理 ・・・ 文書が個人的に保管されることを避け、
だれでもが取り出せるように組織的に整理すること
文書の保管 ・・・ 現年度の文書及び前年度の文書は、課ごとに
その事務所内に置いたキャビネットに収納
※ ファイリングシステムの採用
前々年度以前の文書が文書倉庫に移動されて「保存」されることと区別
未処理文書(→懸案フォルダー)、完結文書(→個別フォルダー)
文書分類基準
文書の保存 ・・・ 文書主管課が各課から文書の「引継」を受け、
文書倉庫に文書を収納整理すること
※ 文書ごとにその利用度、重要性などに応じて、
永久、10年、5年、3年などの期間が定められ、その間保存
※ 閲覧 ・・・ 文書をその場で返却する場合
借覧 ・・・ 文書をほかの場所に持ち出す場合
文書の廃棄
昭和63年公文書館法が成立→歴史的に価値ある公文書の取扱
「文書管理通信」編集委員見習い 樹令(いつき・れい)
2019年4月12日 |