阿見町では、たとえ電子的に作成された起案文書であっても、必ず印刷出力し、紙の状態で決裁されている。また決裁が終った紙文書はファイリングシステムのフォルダーに格納することを原則としている。当初作成された電子文書も当然統合文書管理システムのフォルダーに格納することになる。
このような側面から見れば2つのシステム側に各々紙文書と電子文書が置かれている状態となるが、しかし一方、元々紙のみで作成された文書や、外部から紙の状態で収受した文書の実物はファイリングシステム側にしか存在せず、統合文書管理システム側ではフォルダー名として登録するものの、中身は空という状態となる。 (その逆に、メール通信文などの決裁を要さない電子文書は、統合文書管理システム側のみに保管するといったケースがあるが、これは電子メールの受信の際に電子認証を行うため、公文書としての原本性が確保されている。ただしこういった電子文書の量は、現在のところ極めて少ないとのことである。)
以上のことから、阿見町ではあくまでも紙文書が本来の公文書であって、統合文書管理システム上の電子文書の扱いは、紙文書の控えあるいは文書検索上のインデックスデータの意味合いが、少なくとも今の時点では強いのではないかと推測される。
統合文書管理システムの電子決裁システムが未導入である事は前述したが、このことは電子的に作成された文書が公文書として認証されるシステムがまだ出来上がっていないということでもあって、その意味でも阿見町における公文書の原本はあくまで紙文書だということであろう。
紙文書を原本として必ず保存するというルールは、統合文書管理システム導入の契機の一つにペーパーレスオフィスを挙げていることからすると、むしろ逆行した考えにも思えるが、電子決裁システムが未導入で、法的な原本性の問題がクリアできていない点から考えれば、現時点では止むを得ない判断であると考えられる。
また、技術的な問題から考えても、紙を発生時点で電子化して統合文書管理システムのファイルとして格納するためには、スキャナへの読み込みから作成した画像の特定フォルダー内に保存するといった一連の流れの作業を誰でも簡単に行なえる優れたヒューマンインターフェースが必要であるが、これを実現するためにはかなりの投資が必要で、図面などの大型文書を一般文書と同じようにこの流れの中で簡便に処理ができるのかは非常に疑問である。
このような技術的側面やコスト面を度外視してペーパーレス化を言う事はナンセンスであるし、また現実的では無いと考えられる。 |