【マイクロフィルムなら500年は大丈夫・・・?】
全国の自治体や図書館、文書館では多くの「マイクロフィルム」が利用されている。
このマイクロフィルムの保存性に関して、平成5年12月27日の朝日新聞夕刊に
「マイクロ資料予期せぬ劣化」 旧式フィルム波打つ/作り直しの動きも
と題したショッキングな記事が掲載された。
従来、長期保存可能な媒体と考えられていたマイクロフィルムが30年経つか経たないかで劣化の危機にさらされているというものである。 今から14年前のこの警告記事がきっかけとなり国立国会図書館をはじめとした公的機関や自治体、ならびにフィルム化・画像化を手掛ける業界で大きな議論が巻き起こった。
【“ビネガーシンドローム”ってなに?】
ここで問題となったフィルムは、通常 TAC(タック) と言われるトリアセテートセルロース(三酢酸)をフィルムベースに使用したものでした。
保存環境により差異はみられますが、このトリアセテートが温度と湿度の影響を受け加水分解することに起因して劣化が始まり、強い酢酸臭を発することからこの劣化現象を称して“ビネガーシンドローム”と呼ばれています。
【問題に対する認識と対処は?】
現在、マイクロフィルムのベースは「TAC」から「PET」(ポリエステル)へと変更されてはいるものの、自治体をはじめ関係機関では変更以前に作成もしくは購入されたトリアセテートベースのマイクロフィルムが多く保存されているのも事実です。
しかしTACベースのマイクロフィルムを保有する諸団体において、劣化に対する認識と対処が充分なされているかと言うと決してそうではありません。
マイクロフィルムに記録された貴重な情報がその劣化とともに消失してしまってよいはずはありません!
【安江氏の警告!と問題提起】
国立国会図書館の副館長を歴任され、現在は当館顧問の安江明夫氏はこの問題に深い関心を抱かれ調査研究を重ねた上で、現場へと強い警告を鳴らしています。
この度、図書館協会(資料保存委員会)での氏の講演を拝聴することが出来ました。
( ⇒ この講演レポートは氏の「問題提起」とともに後日報告させていただきます)
【劣化はある段階から急激に!】
トリアセテートベースフィルムの劣化は「ある段階」を境に急激に進行します。
「ある段階」の到来は保全環境により大きく左右されますが、作成からおおむね25年から30年経過したものは劣化の危険性に晒されていることを認識する必要があります。
“ビネガーシンドローム問題”は決して過去の問題ではなく現在進行形であり、未来へと記録を残す責に携わる人々に今日課せられた緊急課題である!との氏の警告を重く受け止めるべきではないでしょうか。
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