高度情報化社会を迎え、e-JAPAN・電子自治体の推進にともないデジタル情報の持つ検索性や通信制などの多くのメリットを享受しようとして、文書資料のスキャニングによる電子化や、e-文書法に触発されてのボーンデジタル文書が急速に増大している。このデジタル情報は利活用の面から無くてはならないものではあるが反面、長期保存の面からみると諸々の事由により大きな危惧が残る。 本書は、「デジタル情報」・「マイクロフィルム」・「紙文書」を、情報資産の利活用、長期保存の観点から捉え直し、豊富なデータや図表を用いて“諸々の事由”を丁寧に解説しており大変わかり易い。 その考察から各々のメリットを組み合わせた「マイクロフィルムを使ったデジタル・アナログ・ハイブリッドシステム」の有用性を説いている。
第3章では、国立公文書館での勤務経験を持ち、現在は「国際資料研究所」を興され大学での教鞭とともに記録管理、情報保存に関わる各種団体の要職を務めている
小川千代子氏との対談が掲載されている。この対談では記録を系統的に整理して残そうとする土壌づくりが大切であり、「今日の文書は、明日の古文書」との考え方から
「ワークシステムとレコードマネジメントシステムの連携に真剣に取り組む必要がある」と
強調している。
また、第6章で取り上げているマイクロフィルの新技術には目を見張るものがあり、
ハイブリッドシステムの何たるかを理解するのに見落とせない項目が満載である。
アーカイブに携わる関係者はもとより、文書管理のご担当者、情報システムのご担当者
の方々にもぜひお読みいただきたい一冊です。
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