前著「ファイリングシステム入門」では“エコオフィス環境の構築”を次の「ファイリング・マネージメント」では“ダイエットオフィス”を唱えた著者が、続く第3弾としてIT時代の文書管理を真正面から捉えなおしたものである。
関西大学での「文書管理論」テキストとしての使用をも念頭に置いただけあり、図式を多く取り入れ大変わかり易く平易な記述となっている。
全編を通しデジタル化に対する単なる幻想をいましめ「デジタル文書管理の基本はセキュリティなど組織のリスク対策を念頭において進めるべき」であると説いている。
またその構築には「タイミング・スピード・集中性」を基本に点(個人)→線(部署内)→面(部署間)→立体(外部)へと順序立てて展開する「スモールステップ」が重要だとしている。
<本書の内容>
本書は6章から構成されている。
第1章、第2章では、デジタルファイリングの考察に先立ってまずは紙での文書管理をしっかり捉えなおそうとの考えのもと、「文書管理の現状とニーズ」と「文書管理の基礎知識」を取り上げている。
なかでも「ワリツミ方式」(*1)や、「機能別オフィス」など興味深い提案がなされている。
(*1)「ワリツミ方式」中分類を基準にして文書の移動を容易に行えるため組織の変化に対応しやすいとされるワリツケとツミアゲの混合した文書分類方式
第3章ではデジタル文書とはどう有るべきかを取り上げ、文書デジタル化のメリットとして、情報の共有化、スペースセービング、検索の効率化を掲げ、紙文書、デジタル文書の各々の特徴をつかんだ切り分け、使い分けが重要であるとしている。
また、デジタル文書の特性から永年に継承することには様々な問題から無理があるとし、
デジタル文書として保有する期間を5年、ハード・ソフトの更新が頻繁な組織では2〜3年が限度としている。
さらに、デジタルデータの消失リスクを考慮し長期に残す貴重なものは他の媒体に出力しておく必要があるとも提言している。
このことは近年危機管理の観点から分散管理が注目を集め、その方法としてデジタルアーカイブスが取りざたされていることとも符合する。
第4章では、デジタル文書の原本性・法的証拠能力に触れ、真実性、見読性、保存性を確保するための電子認証やXML方式、媒体変換などを述べている。
続く第5章では、デジタル化の具体的方法を、最終第6章ではデジタル化の実施事例を紹介し本書を結んでいる。
全体として電子文書のライフサイクル(収集、活用、保管、保存、廃棄)にあわせ紙文書と対比し各方面から考察を加えられており、行間から著者の長年にわたる経験と実績が滲み出ている1冊で、文書デジタル化の入門書として一度は読みたい著書である。
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