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自治体のための文書管理ガイドライン
−情報公開対応の文書管理の在り方−

著者:廣田傳一郎
発行所:第一法規株式会社
平成13年3月27日初版
定価(本体)2800円

本書は情報公開法施行直前の平成13年3月に初版が発行され既に4年弱を経過している為、既に読んでおられる方も多いのではないかと思われるが、情報公開法が制定され、付属する同法施行令、文書管理ガイドラインによって官公庁の文書管理の有るべき姿を国が示したことは、わが国の文書管理の歴史の中でも特筆すべきことであり、また本書がこの法と施行令について詳細に説明された初めての解説書であると思われることから、復刊された「文書管理通信」の最初の紹介書籍として相応しいと考え本書を取り上げる事とした。

著者の廣田氏はかなり前のことながら、当文書管理通信編集室に立ち寄られたことがあり、その折意見の交換をさせていただいたことがあった。

当時は同氏が静岡県内で、島田市のファイリングシステム導入を指導しているさなかであったかと記憶している。

このように全国で多くの市町村、他の文書管理改善の指導に当たられ、今日いわゆる文書管理用具や什器メーカー系コンサルタントが目立つ中、その指導内容はより公正で偏りが無いものと私どもでは考えている。

情報公開法施行令とガイドラインの制定に際しても、本書冒頭の総務省情報公開法準備室長藤井昭夫殿(現総務省官房審議官)の「推薦のことば」の中に触れられていることから、著者の文書管理についての考え方が、藤井氏を通して何らかの形で影響を与えているかと推測する。その意味でも本書は、情報公開法と施行令及び文書管理ガイドラインについて、より法の真意に近い解説の内容であろうと考える。

著者前書き冒頭に「文書管理の『基準』が決まった」とある。

この言葉は、著者の情報公開法とその中でおこなわれるべき文書管理の指針を、米国に遅れること30年でようやく成し遂げられた・・との筆者の思いを如実に示す叫びのように聞こえる。

またこの言葉は、穿った見方をすれば、全国の市区町村において採用されているファイリング手法のあまりの多様性あるいは任意性に対して、筆者がかねてより業を煮やしていたことを窺わせるものなのかもしれない。

さらにまた、本来適正な員数の文書管理専任担当者を置くことで維持が可能となるファイリングシステムを、せっかく導入しながら、継続的に人的コストを負担することができずに結局は崩壊して行く様を長年見続けてきた筆者が、ようやく正当に人的コストを負担すべき基礎条件が整ったと、快哉の声を上げたということなのかもしれない。

以上の推測が正しいかどうかは筆者に聞いて見なければわからないが、いずれにせよ前書きの敢えて冒頭にこの言葉を示した筆者の思いの丈は大きなものがあったのかと思う。

<本書の内容>

本書は三編に分けられ、第一編では情報公開法、同施行令第16条の規定とこれに付属する文書管理ガイドラインについての法文解説を行なっている。

第二編では、文書管理ガイドラインに基づいて行なわれるべき文書管理の具体的な改善方法が示される。

その第1部で文書作成の心得や文章表記、表現法に触れ、第2部では有るべきファイリングシステムの手法や用具、さらにはシステム構築にあたってのコンサルタントの活用方法についても触れる。平成の大合併の渦中に有る団体や総合(統合)文書管理システム導入を図る団体では、紙文書のファイリングシステム構築又は再構築が必要となるものと思われ、資料編の東京都文書管理規則とともに是非これを読み参考とされることをお奨めしたい。

第3部では情報公開法との関連において、あるいはコンピュータシステムによる文書管理分野の根本的な事務能率の改善の側面からも、現在避けて通れない総合文書管理システムについて解説する。

第三の資料編では、施行例(抄)、文書管理ガイドライン全文、中央省庁における総合文書管理システムの整備方針を明らかにした総務省の「総合的な文書管理システムの整備について」と、その仕様要件を定めた「行政文書のファイル管理システムの統一的仕様」を収録し、更に東京都の文書管理規則、宮城県の電磁的記録管理要綱と同取扱要領を、地方自治体において今後取り組むことになる、情報公開と総合文書管理システムを前提とした新たな文書管理規程策定の参考資料として収録している。

国が情報公開法をようやく制定し、同施行令で文書管理に触れ、また拘束力は中央官庁止まりではあるものの、地方公共団体にも適用が可能な文書管理ガイドラインを定めたということは、日本の文書管理の歴史の中で特筆すべきことであった。

この法によって、従来多くの官公庁で観察された自己の業務遂行のためを主目的とする文書管理から、国民、市民の財産としての公文書をより迅速に公開することをも主目的に加えた新たな文書管理の概念に劇的に変化したことを、筆者は何よりも読者たる地方公共団体職員に伝えたかったのであろう。また更に、そのような文書管理の目的の変化は、公文書のファイリングの手法にも及ぶものであり、今後施行令とガイドラインに示された適正な管理手法を、どの自治体であっても採用せざるをえないことをも大きな声で伝えたかったのである。

本書は情報公開法、同施行令、文書管理ガイドラインの解説本ではあるが、その解説内容以上に本書から汲むべきは以上の事どもではなかろうか。


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